ナルちゃん憲法
六月になりました。立夏は一か月前でしたが、衣替えの時期になり、森羅万象が夏の時節に移行します。暑中見舞いのハガキも発売開始となりました。
むらむらに咲ける垣根の卯の花は
木の間の月の心ちこそすれ
藤原顕輔 千載和歌集 第一三九番
先日、民放テレビで「皇室スペシャル」が放送されました。それは美智子皇后陛下の特集でした。
平成二十五年歌会始の皇后陛下御歌(みうた)
天地(あめつち)のきざし来たれるものありて
君が春野に立たす日近し
心臓手術を受けた陛下のご回復をお祈りされて詠まれています。
昭和三十五年に、皇后さまが浩宮徳仁(ひろのみやなるひと)親王を誕生されたときに、これまでの皇室伝統の改革がなされました。その一つが乳人制度(別の女性が母乳を与える制度)の廃止でした。皇后さまはご自分の母乳でお子様を育てました。そのとき詠まれた歌に
含(ふふ)む乳(ち)の真白きにごり溢(あふ)れいづ
子の紅の唇生きて
母親としてのよろこびが詠まれています。
徳仁親王が七歳になられた時に陛下(当時は皇太子)とご一緒に記者会見に臨まれました。
記者団から親子同居に ついて尋ねられた時に
陛下「別々というのは 良くないと思います。 別々に生活をしていると、心の安らぎというものがないと思います。こどもは、ナルちゃんとか、そんなふうな呼び方をしていますけれど、まだあまり通じませんからね。」
マイクが傍らの皇后さまに移りました。皇后さまは、「通じます」と、かしこまりながらもはっきりとおしゃっていました。「今、どこでも這って歩きますし、それから物に伝わってどこへでも歩いています。」
この時期に、両陛下には徳仁親王と別れてのアメリカ訪問十六日間のご公務がありました。皇后さまは徳仁親王の子育てメモをお付きの人に託されました。これが「ナルちゃん憲法」と呼ばれています。その一部を紹介します。
○一日に一回は、しっかり抱いてあげてください。愛情をしめすためです。
「あなたのことを、大好きな人がたくさんいるのよ」と教えてください。
○自分で投げたものは、なるべく自分で取りに行かせるように、軽く背中を押して「取ってきてちょうだい」と言ってください。
○好きでない牛乳はコップに少しだけ注いで、飲んだら「なーい」と言ってほめてください。そしてこれを繰り返してください。
「ナルちゃん憲法」には子育ての愛情と神髄が述べられていますので、「母子手帳2」でもありましょう。